蹲(つくばい)周辺の手直し作業

庭造り

先日、タマリュウの根の撤去と仕切り板の追加についてご紹介しましたが、今回はその関連作業ということで、蹲(つくばい)周辺の手直し作業についてご紹介して行きます。

こちらの写真はここに初めて蹲(つくばい)を設置した時に撮影したものです。『たぬきおやじ』が庭造りを始めたばかりの頃で、当時の記録を確認すると2008年4月に完成しています。

蹲とは、茶室に入る前に手を清めるために置かれた背の低い手水鉢のことで、茶道の習わしとして客人が這いつくばるように身を低くして手を洗うことからこう呼ばれるようです。尚、漢字二文字で蹲踞と書かれている場合もあります。

この時点では水が出てくる筧(かけひ)も設置してあり、竹の中には水道管が埋め込んであったのですが、年月の経過とともに劣化してしまって今は残っていません。

蹲は、手水鉢(ちょうずばち)を中心にして、前石(まえいし)、手燭石(てしょくいし)、湯桶石(ゆおけいし)の三つの石で構成されており、これを役石(やくいし)と言うそうです。そしてこれらの石で囲まれた部分が水門(すいもん)または海と呼ばれています。

手水鉢は水鉢(みずばち)とも呼ばれますが、ここに使っている石は40年程前に古い自宅を解体した時に出てきた石臼を流用したものになります。手水鉢の手前正面にあるのが前石で、手水を使う際にこの上に乗る石になります。

手燭石は手水鉢の右側にある石で、夜の茶会時に手燭などの灯りを置く石だそうです。そして手水鉢の左側にある石が湯桶石で、冬季など寒中の茶会時に湯桶を置く場所です。尚、これは裏千家の場合の配置で、茶道の流派によって手燭石と湯桶石の位置が逆になるようです。

ここは茶室ではありませんが、和風の庭では縁側の近くに設置されることが多いようです。先ほどご紹介した決まり事に従って石を配置してあるのですが、土の上にそのまま石を置いているだけですので年月の経過により前石がかなり沈み込んでいますし、右側にある手燭石も傾いてきていますので、これらの石を改めて並べ直すことにしました。

また、前石や手燭石、湯桶石などの役石同士の隙間を埋めるようにして間に小さめの石を配置していますが、手水鉢と前石との距離をもう少し短くするために更に小さい石に変更してやります。

こちらが配置の変更を行った後の状況です。前石は下に土を追加して嵩上げを行うとともに、赤い小さい丸印のところにある石を変更して手水鉢に近くなるように位置や向きを見直しました。

また、右側の赤い丸印のところにある手燭石は、右横にあるサツキの枝の下に入り込んでいましたので、位置を少し左側に変更するとともに真っ直ぐになるように手直しを行いました。手前に石が積んであるのは土が固まるまで倒れないようにするための仮支えです。

石が傾かない程度に土が固まるのを待って周辺の砂利を元に戻しました。作業前の写真と比べてもどこが変わったのか分からないかもしれませんが、配置を見直したことで水門(海)が少し小さくなり、全体的にコンパクトになった感じです。

水が出なくても良いので見た目だけでも筧を復活させたいところではありますが、竹などの材料の調達も必要になりますので、また機会をみて考えたいと思います。

続いての作業は前回と同じ仕切り板の追加になります。残念ながら今回調達した芝の根ストッパーは全て使い果たしましたので、ここには以前に購入した時の残り1枚を使用しました。

出来ればここにも仕切り板が欲しかったのですが、もう残っているものはありませんし、この僅かな場所のために追加購入するのも勿体ないため、ここには先ほどの蹲の手直し作業で余剰になった石を活用します。

作業の前後で撮影する角度が違っていて申し訳ありませんが、こちらの写真が石を追加した状況になります。作業にあたっては追加した石のサイズに合わせて大きな石の配置も見直しました。蹲の手直しをこのタイミングで実施したのは、ここに石が欲しかったというのが本音になります。

最後の作業箇所がこちらになります。ここは左右にあるサツキが大きくなってくれば特に仕切りが無くても問題ないのですが、丁度良い大きさの石が残っていましたのでそれを追加しました。

作業後の状況がこちらになります。この石については蹲の手直しによって捻出したものではないのですが、なかなかピッタリのサイズでした。

梅雨入りしてからも晴れ間があり、今回の一連の作業は何とか終えることが出来ました。梅雨明け以降は暑さも厳しくなるため庭仕事はしばらくお休みですが、また秋を迎える頃には松の木の選定作業あたりから再開したいと思っています。